フリーランスクリエイター あつたけ氏 インタビュー
「平家物語:屋島の闘い」、「讃州丸亀烈女傳」など個人制作によるオリジナル時代劇アニメーションを制作されているあつたけ氏にお話しを伺いました。
大学卒業後、ゲーム会社に入社し3DCGを学ぶ。ゲーム会社在職中にLightWaveと出会い個人制作の作品を手掛けるようになる。現在は本業に勤しみつつ、「3DCG AWARDS 2011」や「2011 YouTubeVideoAwardsJapan アニメ部門」、「うどん県アートコンペティション CG・アニメーション部門」、「愛してとくしま大賞」など多くのコンテストに参加し受賞。
作品集:http://www.youtube.com/user/atubamboo
HP:http://atutake.chu.jp/index.html
簡単な経歴とLightWaveを始められたきっかけを教えて頂けますか?
あつたけ氏:大学を卒業してゲーム会社に就職し、ここで初めてCGソフトに触れました。当時使用していたソフトはSTRATA STUDIO(現:STRATA 3Dpro)で、主に背景を作成しておりました。1年ほどで会社を退職したのですが、3Dでアニメーションが出来たらもっと面白いと思っていた頃に、LightWaveに出会い貯蓄していたお金で購入しました。
DS:最初に使用されていたLightWaveのバージョンはいくつになりますか?
あつたけ氏:LightWave 5.0のMac版になります。現在はWindows環境で使用しています。
DS:いつごろから、自主制作作品を作られていたのでしょうか?
あつたけ氏:去年の「3DCG AWARDS 2011」に出しました「平家物語」が初めてとなります。それまでは趣味で静止画のCGを制作しておりました。
3DCG AWARDSやYouTubeで賞を受賞した後、何か変化はありましたでしょうか。
あつたけ氏:色々なところから制作のお話しはいただいておりますが、今のところは大きな変化はないです。
傾城阿波鳴門(けいせい あわのなると)を制作されたきっかけを教えてください。
あつたけ氏:昔から徳島県でおこなわれている人形浄瑠璃小屋の演目の1つである「傾城阿波鳴門」を紹介する動画を募集しているとことを知り、自分自身のチャレンジの気持ちで制作することにしました。人形の動きは伝統芸術としては素晴らしいのですが、言葉や話が難しかったり、何を演じているのかわからないといった方もいるかもしれないと感じていました。そこで、演目を見る前の予備知識として、話を短くまとめたあらすじをCGアニメで紹介し、内容を理解してもらった上で演目を見て頂くと、より楽しめるのではないかと思い、この映像を作りました。
DS:人形の動きは参考にされたのですか。
あつたけ氏:人形の動きはある程度参考にしましたが、伝統技術的な動きは難しいので、自分である程度試行錯誤しながら制作していきました。
あつたけ様の作業ワークフローを教えてください。
あつたけ氏:自主制作は自由に作らないと飽きてしまうので、イメージしたキャラクターや動きのラフを描いた後で、モデリングから始めます。モデリングを終えたら、個別にシーンを構成しながら演出していきます。最後にそれぞのシーンを繋ぎ、統合性が合うように演出を加えアニメーションを制作していきます。
DS:ラフを描くのは登場するキャラクターは全てを描くのでしょうか。それともメインキャラクターのみでしょうか。
あつたけ氏:メインキャラクターのみになります。ラフを描くのも、3Dでいきなり制作するのもあまり変わりませんので。
LightWave以外に併用しているソフト等を教えてください。
あつたけ氏:アニメーション付けには、以前、別売りされていたFiLMBOX Character(現:MotionBuilder)を今も使用しています。セルの表現にはunRealプラグイン、テクスチャ用としてPhotoshop、合成用とテロップにAfterEffects、映像と音声を合わせるためにPremiereを使用しています。
制作するにあたり気をつけてることやこだわりがあれば教えてください。
あつたけ氏:初めから複雑なものを制作しようとすると途中で断念してしまうので、まずは基本的な流れを制作し、その後可能な範囲でさらに作り込んでいくようにしています。
LightWaveでアニメーションを制作する際に気を付けている点などがありましたら、教えて下さい。
あつたけ氏:やはり、キャラクターを売りにしていきたいと思っておりますので、キャラクターが魅力的に見えるように考えながら作っています。
DS:なにか参考にされる動きなどはありますでしょうか。
あつたけ氏:特に参考にはしていないのですが、文献や昔の資料を参考にしながら所作的な事は確認しています。ただそれだと、魅力的に見えない場合がありますので、いろいろな写真を見ながらポーズを組み合わせるなどして、独自の動きも考えています。
あつたけ様独自のテクニックやこだわりなどがありましたら、可能な範囲で教えて下さい。
あつたけ氏:独自のテクニックは特にはないのですが、メインキャラクターを主体にアニメーションを付けるようにしています。これは座頭市の撮影技法からヒントを得ています。座頭市では勝新太郎氏が目を瞑って殺陣を行っておりますが、これは勝新太郎氏が一通り動き、これに合わせて周りの人たちが動作するという手法で撮影されているそうです。
ここからヒントを得て主人公の動きを先につけた後で、周りのキャラクターに動き付けるといった制作方法を行っております。
DS:昔の時代劇風な作品が多いですが、このような作品を制作されている理由を教えて頂けますか。
あつたけ氏:時代劇が好きだというのもありますが、皆さんが作られない変わったことをしていきたいという点があります。また、地方の文化というのは独自のものがあるので、そういったものを紹介しながらやっていけたら楽しんじゃないかというのが根底にあります。
DS:2頭身のキャラクターが多いようですが、これにもこだわりがあるのでしょうか。
あつたけ氏:制作する物語が難しいものが多く、とっつき難い部分もあるかと思いますので、なるべく可愛いらしキャラクターを取り入れていこうと心がけております。老若男女問わず、こんな所にこんな物語があるというのを紹介するにはCGアニメというコンテンツは入りやすのではないかと考えております。
DS:モデリングはどのように行っていますか。
あつたけ氏:ボックスを細分化してベベルを行ったり、ナイフツールで分割したりして調整しています。あとは、ドラッグツールを使用し頂点編集などもしています。
あつたけ様がLightWaveを使い続ける理由を教えてください。
あつたけ氏:自分の作りたい物と規模というものを考えるとベストなソフトなのかと思います。LightWaveは使い慣れていますので、頭で思い浮かんだイメージというのを特に手順を考えることなく表現できるというのは利点だと思いますし、バージョンアップされる度に便利になってきていますので快適に使用しています。
DS:バージョンアップの度に色々な新機能が実装されますが、作品の制作には新機能を使用されますか。
あつたけ氏:新機能が少ないステップで使用できるようであれば使用します。
LightWaveのお気に入りのツールなどがあれば教えてください。
あつたけ氏:お気に入りのツールではないですが、要望としてレイアウトでVertexPaint的なことを行いたいです。
DS:バージョン11の新機能を使ってみて、使いやすかった点や改良して欲しい点などはありますか。
あつたけ氏:粉砕やBulletは簡単で、クリックをすればすぐにできて便利ですね。
LightWaveに実装してほしい機能があれば教えてください。
あつたけ氏:セルエッジのラインをもっとブラシ的なアニメーションにして頂きたいです。水墨画のプリセットがあるとありがたいと思います。
これからLightWaveを始められる方や3DCGを始めたい方へアドバイスをお願いします。
あつたけ氏:長く続けていると、「3DCG AWARDS 2011」などのいろいろなイベントに呼ばれることもございますので、諦めずに続け下さい。諦めずに続けていくことで人から認められる機会も増えますので。そして、好きなように作品を完成させ続けていくことが、楽しく続けられる秘訣ではないかと思います。